高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§168 小学生から中学生になる段階で・・・<改訂>
<ふつうの学力とは>

 今回の内容は、とくに小学5・6年生をお持ちのご父母の方へ向けたもので、時期が時期だけに恐れ入りますが過去のなかより選んだものを配信させていただきます。

 入塾テストをします。小学校から中学に入る段階、即ち新中1生の入塾テスト(併せても1時間も要しない)で、算数・国語の2科目について簡単な学力を測ります。

 小学校で習った基本的学習内容がどれだけ頭にしっかり残っているか、5年、6年で学んだ基礎がどれくらい身についているか、これから中学生になって中学の数学や国語、英語を習う際に、すんなりとはいかないまでも程々には吸収する基礎能力があるんだろうかなど予めチェックするテストです。

 よって、ひねった問題、応用問題の類は、テスト内容に意識的に含めないようにしています。例えば算数でいえば、分数・少数の基礎の計算から、単位転換、速さの文章題、円や立体の求積などです。しかし「2:3の比の値はいくら?」といったレベルの問題での正答率は30%以下ですし、国語に関しても、漢字の読みなどで、「朗(  )らかな笑い声」といったものですら、80%以
上の生徒が読めません。すでにこの段階で、教える前からオカシイ学力になっているんですね。

 こちらとしては、学校のほうでよくできている生徒はまあ80点以上は最低、いや、せめて70点以上は取ってほしいなあと思っているわけです。というのも、まったく基本ばかりのやさしい問題の構成であり、ほんの少しややこしい問題を10点ほど含ませているものの、それは市販の問題集をやれば必ず載っているような、本格的な応用とはまあ呼べないレベルの問題で構成してあるからです。

 採点をし、生徒と親に返し、説明します。そして学校でふだん取ってる算数と国語の点数、また小学校時代の先生の評価を尋ねますが、その前に、返された答案を見て本人ばかりでなく、お母さんも大いに驚かれるのがふつうの光景といえます。――こんな筈はない!・・・、と。

 というのは、算数も国語も90点以上はつねに取っていますし、先生も別に勉強に関しては心配はなんらありません、といわれてるケースが大半で、本人もお母さんも当然そう捉えているからです。
 
 たとえば、返した答案の点数は、算数42点、国語38点といった内容です。これが平均的実態です。つまりはこれ、いまの生徒の算数と国語の学力の平均点ととらえても、おそらくその誤差はあまりないはずです。よい例でいうなら、学校でふだんのテストの点は、95点前後、たまに難しいのか90点をきることもある、といったお母さんの話の生徒でも、算数が72点、国語が63点といった感じになるでしょうか。これでまずまずと看做さねばならないのは、なんともいまいち承服しかねるところがありますが。

 悪い例なんてきりがありませんが、たとえば算数24点、国語18点、こんなものでしょうか。ひど過ぎます。あまりにひどい。なんともならんよ、これではね。これをなんとかするには、まあ気の遠くなる作業と時間が・・・。

 私立中学受験を体験し、本格的な受験勉強をしたことのある生徒と父母なら、無事に合格しようと失敗しようと、本人の学力レベル、実力をそこそこ把握しているものですが、それ以外の生徒の多くは、自己の客観的な実力を知りません。小学校のあいだにそれを知る機会に無縁であったのかなと思いたくなる生徒は案外とても多いのです。そして生徒の真の実力の認識に、かなりの甘さが露見されるのはこういう機会なのです。

 これは生徒本人ばかりでなく、上述したように父母の方も残念ながら同様であるケースが後を絶たず、学校からもらって来る答案の点数だけで勉強の出来不出来を判断するのは、大いに危険であるといえます。力がたしかについてるかついてないかの判断は、つねに習った全範囲からの出題で試されるべき性質のもので、狭い単元にとどまった内容の確認テストに根拠を置くのはとても危険なことです。このことはわかっているようで実はふだん、そのようには見てないのです。

 既述しましたように、平均的な生徒で、入塾テストの点数は35点から40点。これは、はっきり申して、力が大いに不足している状態です。力がありそうでちょっとまだ足りないなというのは、基本問題のテストで、すくなくとも70点を超えてからです。いまの公立中学に進んでる生徒の75%前後は、このテストの点数でいうならば、下は10点からいいところ60点までに相当します。つまり、「基本学力」そのものが備わっていないといえます。

 これが逆ならわからないことはないのですが、つまり、4人に1人が基本の学力が備わっていないではなく、4人に3人がなんらかの形で基本の学力そのものに不足が生じています。これは理科、社会を含めるともっと深刻だといえます。唖然とすることに、ある報告によれば、5,6年生の4割の生徒が、「太陽が地球のまわりを回っている」と思っているとのことで、なんとも寒気を感じます。

 これらのことをまるでアッパーカットを喰らったかのように痛切にわかるのが中学生になろうかという段階では、かなり間が抜けているとしかいいようがありません。そんなことはとっくにわかっている、小学校で教えてる内容と中学受験の問題内容は隔絶したものがあり、学校のテストには信を置かず、「実力とは何たるものか」をじゅうにぶんに識ってるお母さん、お父さん達も、また結構おられます。

 しかし反面、小学校時代は授業内容だけはしっかり理解して、あとは子供の好きなようにのびのびさせて、中学になってから勉強のほうも力を入れ頑張っていけばいいわ、という主義の親もいるわけで、その他さまざまな考えや方針の方もおられます。

 ただ後者の場合のなかで、指摘しておきたいのは、往々にして上のような学力40点という問題が、突然ある日、目の前に降って湧いてくるという現実があるということです。まあそれはご存知のように、ほんとうは徐々に確実に進行してきたわけですが、それがまったくみえていない、また察知せず見過ごしたままなのですね。小学の大事な学年は、5年と6年でしょう。この2年間に各生徒にどれほどの格差ができてしまうかは、おそらく想像以上だと思います。

 まあ、わたしなんかものびのびと、いや、ぼーっとしてこの時期送ったくちですが、それでもあらゆる本を夢中に読みましたし、算数の文章題や図形なんか受験に関係なく、自己流に勉強もしました。それがどうしたというものでもありませんが、いまの公立中学に進んでくる生徒の、その基礎学力のなさ(応用力ではありませんよ、応用力では!)には、ほとほと参ってしまうといいますか、なんとかふつうにね、ふつうの学力だけは身につけて、中学に進めば?!と思うわけです。この場合の「ふつうの学力」とは、「平均的な学力」という意味ではもちろんありません。そんなものは上で書きましたように、あまりにもお粗末、ガタガタですから。

 ここで少しだけ逸れます。成績を上げる、あるいは上げてもらうという目的で、中学になって、さあ塾に入ったはいいが半年しても1年経っても一向に成績が上向かない、また中2になって成績が落ちてきたといった事例が、一般に非常に多いかと思います。これは説明と分析をすればえらく長くなるので避けますが、ここではざっとあらくいいますと、やはり本人に帰する原因が半分以上は確実にあるとしても、他の原因として、まるでいつも第三者的な知らぬ顔をしている小学校での教育とその諸々の指導にもあり、もちろんマズイ指導をする塾の責任もあるでしょう。

 しかし、その原因云々をいっても飯が不味くなるのと同じで、そうならないために、つまり「平均的な学力」といった出来の悪い基準に惑わされることなく、せめて「ふつうの学力」を、中学になれば努力次第で伸びる要素を少なくとも持っている学力を、ぜひ小学時に、なんとしても身につけておいてほしいなあと思うのです。

 小学生のお子さんをお持ちの方は、ぜひ次のことに留意してもらいたいと思います。
 学校のテストだけを判断基準にするのは大いなる誤り、もってのほかということ。目の前に差し出された答案の点数を見て、「ああ、86点、まあまあ出来てるじゃない」と、感覚的に捉えるだけではなく、自分の目と耳と手で直接子供の学力の診断をされてみることもときに必要ではないかと思います。

 そんなの専門家ではないし、やり方もわからない、またよく判断もできない、と考えられる方もおられるでしょうが、しかしちっとも難しいことではありません。ここではふたつの方法を書いておきます。 <小5・6生対象>

 一つ目はいたって簡単、寝転んでいてもできます。

 まず国語。――「国語の教科書の音読です」<小5・6年同じ>

 今使ってる学校の教科書を持って来させ、すでに習った範囲の中から適当なページを開きます。左右2ページを、音読させてみてください。それだけです。まさに抜き打ち検査、前もって練習はしないこと。けじめをつけて、読ますこと。これで何がわかるの? いえいえ、随分わかります。「感じたまま、おかしいなあと思ったことが、いまのお子様の力の正体です」

 声の抑揚、句読点に注意してして読んでるか、漢字がすらすら読めてるか、読んでる内容が横で聞いていて理解できるか、早口でうわっ滑りしていないか、等、チェック項目はさまざまあるのですが、とにかく文がまともに読めるのか、を判断してください。いろいろ気づくはずです。違和感を感じた部分が、問題点です。あと6年生なら、適当な一文をピックアップし、その文の主語と述語を言わせてください。それができるようなら、次にそのなかの適当な単語を指摘し、その品詞名(名詞・動詞・形容詞くらいでいいです)を言わせてみてください。

 次に算数。――
  「適当な用紙に鉛筆で、“半円”を描かせてください」<小5>
  「同じく、“立方体”を描かせてください」<小6>
  
 何度も消しゴムで書き直したり、手間取って時間がかかっていませんか? 
半円は、もう一つ反対に付け加えればラグビーボールのようになっていないだろうか? 立方体は、どう見てもに直方体に見えたり(まだこれならましですが)、対応する辺が平行になっていなくて、どこか1箇所いびつに見えたりしてませんか?

 どうもいまいちおかしいなら、算数や数学でとても重要な、図形に対する感覚、知識そのものが発達していません。自分の目で確認できます。

 ふたつ目は、市販の問題集を使っての学力チェックですね。受験用の問題集ではなく、基礎演習の問題集で十分。算数の場合は、ある程度まとまった単元の復習とかのページを用いて、どれだけできるか、覚えてるかをチェックと採点をする。国語も同様ですが、できればテスト形式の問題集がいいですね。もちろんお母さんが採点されて、そのどこが悪いのかを直接みてください。

 そこにはふだんとはまったく違う、生徒の勉強の中身と実力の実態が出てくる筈です。そしてなにより、自分の目で問題点と弱点が見えてくると推います。気がつかずに中学へ進むより、気がついて、また気がついた時点ですぐに、できうる限り補うほうがいいにきまっています。せめて基本の学力は、70点以上は取りたい。そこらあたりが、「ふつうの学力」です。