E-juku1st.Comの中学数・英問題集 中学生の学習のしかた  
        中学生の学習のしかた E-juku1st.Comの中学数・英問題集

中学オリジナル各問題集 ご利用者の声 問題集の価格 中学生の学習のしか お問い合わせ ご注文

 HOME <新版>公立入試英語の攻略  入試図形問題の攻略Version4 <新版>入試理科の攻略


  高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§89 数学の入試問題得点率について
<中3生諸君に贈る言葉> 

 公立入試の得点率のデータを見ていて、気になる箇所が多々ある中で、数学で特に1点、うーんやっぱりというか、なんでまたこのようなことをするのかなあ、という問題点について、ちょっと触れてみたいと思います。
 
 全国都道府県、その公立入試には特徴と傾向というものがありまして、一概には言えないのですが、また来年度からの入試が新指導要領なるものから出題されるわけで、これまでのデータや分析がそのまま当て嵌まるとはいえないのは承知の上で、しかしされど、本質的なものはそれほど大きくは変化しないと仮定して、以下述べてみます。

 大阪府の場合、数学はここ数年大問4問(制限時間:50分)で構成されています。以前は5問構成の、制限時間40分でした。ゆとりをもってじっくり考えさせるように配慮、変更されたわけです。その意図はわかるのですが、じゃあゆっくり考える時間を増やしたから、それだけ余計に生徒は思考力を試される問題についていけるようになったか、攻略できるようになって点数は上がった
か、といえば、問題の質もありますがそう単純には比例しない。むしろ逆に、生徒の学力は以前に較べ低下傾向を示している。生温いとしか言い様がありません。この度の指導要領で、さらにその拍車がかかるとなると、もう開いた口が塞がりません。

 それはさて、大問1は数学の基礎、基本の力をみるもので、いわゆる計算中心に問題読めば直ぐ解法が浮かぶ平易な問題が出される。100点満点(実際は80点満点)でいうとまあ30点という比率です。ここは全問正解を目指すことが基本でしょうし、少なくとも1問ミスで止めなくてはいけませんね。私が書くまでもなく、誰もが承知している当たり前のことです。そんなことは常識でし
ょうし、人から言われなくてもわかっていなければいけない。後でも触れますが、慎重に解き進め、必ず見直すことでしょう。
 
 しかし、対策をすると、こんなこともわかっていない生徒がいるのですね。絵に描いたようにきっちり2,3問間違えている。おいおい、お前は一体どこで点を取るつもりなんだ?!と言いたくなる。また、実際に言い、徹底してその間違ったテストの受け方、問題の処理のしかたを直す。

 さて、データを見てみましょう。答えが7のところを、±7にしたり、√49にしたままの初歩的なミスをしている生徒が多い問題。確率と反比例のやさしい2問の得点率は60%台。関数2問は49.5%と42.8%。うーん、やはりね。しっかり(?)間違っていて、その間違いの見直しも修正もしないのが受験生の半数はいるということ。

 次に大問2。――1次関数と文章題の融合問題
(1)は小問1,2,3に別れ、(2)は式の計算の証明。「証明」の得点率は21.6%
、無答率49.1%。2人に1人は白紙で、また書いた生徒の半数以上は不正解とい
うことですね。

 大問3は平面図形。――円問題と証明
(1)は小問1,2,3に別れ、(2)は小問1,2に別れる。(1)の3番は得点率23.8%、
無答率27.6% (2)の2番は3角形の面積を求める問題だが、得点率は5.2%、無
答率53.6%。

 大問4は空間図形。――コップに入った水を題材にし、線分の長さ、面積、
体積を求める。
(1)は小問、(2)は小問1,2に別れ、(3)は単独。(2)の2番は図形の計量(体積)
得点率12.2%、無答率40.7% (3)の相似比の問題においては、得点率1.7%、
無答率36.7%。これがワースト1。

 問題が具体的に見えないままおおまかな解説、数値を列挙しましたが、皆様はこのデータからどうお感じになりましたでしょうか? 得点率も気にはなりますが、「無答率」が結構あるのも入試数学の負の特徴ですね。証明問題は相変わらず苦手ですし、5人に1人ぐらいしか出来ていない。また、図形問題を得意とする生徒もほんと少ないのが現実ですが、その問題割合の恐ろしく高いこと。

 大問の3番、4番で、小問に別れた最後の問題はかなりレベルが上がり難しくなるのが例年のパターンですが、3番の最後は、得点率は5.2%、無答率53.6%。この数値については解釈を加えないでもわかることですが、まあもう一度確認、整理するために書くと、出来た生徒の割合は、20人に1人ということ。半数は手が出せずにギブアップ。また、必死に解いた生徒のうち10人に9人は不正解という結果ですね。

 学校のクラスで当て嵌めるのなら、40人に2人が解けたという割合。こんなものか、と識っておくことは、必要だと思います。またそれ以上に今回、このテーマを書く強い動機になったのは、最後のデータです。大問4の空間図形の最後の問題、それは相似比の問題ですが、得点率がなんと1.7%、無答率が36.7%という数字です。

 これを、解くか?!―― 
 得点率はあとにして、無答率36.7%を引いた63.3%の生徒が解こうとしたわけです。これには、驚きました。なんでこれくらいの問題を解かないんだ、白紙のままで手をつけないんだ、と無答の場合、腹立たしくなることもあるわけですが、この場合は逆で、無答率36.7%の生徒には納得がいきますね。

 なぜ10人のうち6人もの生徒が解こうとするのだろうか。得点率は1.7%ですよ。100人中、たったの1人か2人が解けた問題です。これはクラスで40人がいたとしても、そして成績1番の生徒でも解けたことにはならない。30人クラスなら2組に1人の確率ではないか。解こうと試みた生徒のおよそ40人に1人が、というより、40人中39人までが不正解という問題だ。もっと言おう。公立の学区トップの進学校(偏差値68以上)を受験した生徒の中でも半数以上は出来なかったことを意味する。

 なぜなら、数学で内申10の生徒が必ずしも10の実力があるとは限らず(中学の評価を実力として、そのまま100%信じることは出来ない)、9の評価でも実力的には10の生徒を上回るケースもあるわけで(そんな例はいままでしばしば視てきた)、また2番手の高校に数学が異常に出来る生徒も含まれているから。

 まあそんな細部の話はいいとして、ここから私が言いたいことですが、もう一度書きますが、なんでそんな問題を解こうとするんだ?!ということ。もちろんこれは、1.7%を引いた97%の生徒に対しての言葉だけど。計算が違うよ、って? はい、確かにそうですね。入試とは、出来る力があっても、その通り発揮できるとは限らないものですね。緊張もあるし、普段なら出来ても本番で
は思う通りいかないこともあるからです。でも対応する力が備わっているのは、せいぜい3%ぐらいでしょう。

 せっかく頑張っていままでの力を入試本番で試しているのに、それを否定するような意見とはどういうことか? また、解いてみなくてはわからないじゃないか?――といった声があるかと思います。わたしは何でも合理的にものごとを考えるのはあまり好きなほうではありませんが、この場合、かといって薄っぺらな精神的なこと、間の抜けた理想主義を唱えてもしかたがない。

 入試対策をするということは、過去の入試問題を解き、その傾向を知り、わからない問題、出来なかった問題を理解し出来るようにすることだ、また思考力を問われる問題に慣れ親しむことが大事である、と一般に喧伝されている考えかもしれませんが、これは数学に関しては半分真実、半分実体のない虚妄だ、というのが私の見解です。 

 入試対策をするということは、特に数学に措いては、その第一義は自分の力がどこまであるかを量ることにある。どこまで点を取れるか、を見極めることである。逆にいえば、どこが出来ないのか、どのレベルの問題が手におえなくて捨てるか、をはっきり知ることである。もちろん最終段階ですよ、お間違いのないように。それまでの努力、研鑚は当然です。

 対策をしても、はっきり己の力を自覚しないから、自分の力の正確な見極めが出来ていないから、大問1の基本でミスをおかすのであろうし、その間違いを見直して訂正するという当然のことができないのであろうし、大問3や4の一部、どう転んでも正解に辿り着けない問題に貴重な時間を費やす愚をすることになるのであろう。

 こういう言葉がある。
「得ようとすれば、失う。あるいは、失えば得られる、という逆説・・・」
 入試数学は定期テストとはまったく異なる、実力テストともあきらかに違うんだよね。即ち、100点を目指すテストではないわけ。実際やればわかるはずなのだが、わかっていない生徒があまりにも多い。

 たとえば偏差値が65とする。それくらいの力なら、といっても結構高いですね、それでも、100点満点でまともに100点全て解こうなんてすると、70点も取れないでしょう。ひょっとすれば60点も難しいかもしれない。がむしゃらにまた問題順番通りに解くのは、愚の骨頂です。これは以前も書いたことですが、80点を解くことに、集中すれば。つまり、20点は捨てる。その80点の8割を確実
に取れば、64点でしょう。もし9割取れれば、72点になりますよ。64点なら負けていない(失敗していない)、72点なら数学は勝った、ということになるんですね。但し、数学の学力が65くらいの生徒を想定した場合にですよ。

 また断っておきますが、この数値はあくまで一つの目安といいますか参考で、全国都道府県の入試数学の構成は5問が主流のようですが、中には時間40分で9問というところもありますし、短時間で早く解くことを要求したり、問題数は少ないものの一連の問題を掘り下げ、かなり高度な思考力を要求する県もあって、その処理・対応のしかたは少しずつ違いますから。ただ本質的なことは同じだと思いますし、どうぞその自分の力に見合った攻略の呼吸を参考に、また吸収してくれたらと考えます。

 孫子だか呉子だかの言葉に、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という有名な文句があるではありませんか。入試対策に入ると、敵はなるほど知るわけですが、己を知らないまま、即ち、入試対策の半分にしか目をとめていないでテスト本番に突入する生徒があまりにも多いので、今回はまだ時期が早いですが、これを書いた次第です。