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§27 暗記の技について<改訂>
<暗記に、理屈なんかないでしょう!>
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数学:(にごろ)
英語:水田にウエル、ウェドネスディ
社会:砂鉄
理科:さんきうるせい
国語:――
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さて、いったいコイツは何を書いているのでしょうか? 英語はわかりそうですね、水曜日のスペルは、Wednesday
(ウェンズディ)。先に、簡単に触れておきますと、数学の「にごろ」は、16の二乗で、256です。社会の「砂鉄」は、オーストラリアの地図で西部のほうに、即ち、見て左側に鉄鉱石の産地があり、左と鉄で「左鉄」、つまり「砂鉄」と語呂をひっかけた次第。
理科の「さんきうるせい」は、BTB溶液の色の反応で、酸性なら黄色、アルカリ性なら青色を示すわけですが(ついでに中性の場合は緑色)、酸と黄、アルカリと青をまとめて、さんきあるせい、つまり、さんきうるせい、にして、暗記したのです。国語は思い浮かべても、「う・ない・ます・たら・た・て・○・とき・ば・○(動詞の活用語尾のつく語)」くらいで、たいしたものはありません。
すこし解説を加えますと、英語の場合、1週間には7日あるわけだけど、スペルが正確に書けることもさることながら、曜日そのものがしっかり合っていなければなりませんね。習った当初、またテストに出るときは覚えてるのは当たり前だけど、時間が経つと混乱してくるというか、あやふやになってくるのが、おおよその生徒の実態。英作の場面でたとえば、火曜日をThursday
と平気で
(?)書いたりしますから。
「習ったことは覚えろ」と、わたしは生徒に何十回といいます。その意味するところは、その場では覚えている、あるいはテスト前と後でもしばらくなら覚えてる、しかし、半年後覚えてるのか、1年経っても正確に頭に浮かぶのか、その時点でのたしかで揺るがない知識だけが実力だろうが、という意味で使っています。忘れないように頭に焼きつける、刻み込む、深く暗記するんだ、と声を嗄らして指導します。
実際その作業は、これは特に中1生の場合(それも前半の時期)に当て嵌まりますが、英単語の場合、例えば30個の単語を覚えるとしてノートに、各5回ずつ書かせ、それが終わると今度は各4回ずつ、次に各3回、2回、1回と訓練させ、手で覚えるようにさせてます。そうしてテストをし、それでもできない生徒には、さらにまたノートに10回練習、暗記させます。
もうじゅうぶんだろう、もうなにがなんでもじゅうぶんであろう、安心したいねとこちらが思っても、現実の生徒は、例えば上記のような曜日のミスをその後も、あちこちで散発的に(?)やらかしてくれます。もちろんすべての生徒ではありません。しかし半数前後はいます。
――じゃあ、曜日の単語7個をどう覚えれば忘れないようになるのか、忘れずにまた間違いなく自信をもって書けるようになるのか? この問いそのものの愚かさに辟易しますが、ミスをなくすにはどうすればいいかの問い同様に、問いそのものがどうやらおかしい。問題は、客体にではなく主体に在り、またゼロでなく、つねにその程度にあるのだから。
ゆえにその答えは、自分のなかにこそあるんでしょう。つまり、自分の頭で考えること、である。人から教えてもらったテクニック、ポイントなぞというものは、しょせん楽して与えられるものだから、いとも簡単に忘れる。楽して与えられたものは、その値打ちがほんとうにはわかっていないから、シンで掴み取ることはできない。反対に、努力、あるいは創意工夫して、自分で深く考えたものは、そうは簡単に忘れないでしょう。
初めから工夫があるんではない。初めは極めて基本的に、繰り返し手で書いて覚える。その後、例えばこの曜日の単語の場合、時間が経ったとき、どれが自分にとって混乱するのか、完全に覚え切れていないと思われるのかを予測、判断できるかが、ポイントです。それは人と違って当然です。大切なことは何度もここで書いていますが、自分で考えること、その習慣ですね。
参考にわたしの答えを書いておきます。それは、火、水、木の3日です。誰しも日曜日を、Sunday
とは知ってる。暗記の工夫は、次のようになります。火(ひ)をチュ−ッと消すから、Tuesday。(水)田にウェドネスデイ<植える>でWednesday、何でウェンズディといわないかといえば、dのスペルミスを防ぐため。(木)刀をサースディ(さす)で、Thursday。あとは、土曜日のスペルに注意、Saturday
で、urの箇所ですね。もちろん完璧に覚え込んで後では、こんなものは無用の長物としてもらっていいことですが。
次に、数学と国語ですが、この2教科は他の教科と較べて、暗記にかかわることは極めて少ない。数学の場合の、公式とか重要定理等は、忘れることはあっても、他と混乱をきたすものではない。中学レベルの数少ない公式が頭に入らないで、どうして高校の多くて煩雑な公式、定理を覚えきることができるでか?!と思います。また国語も、文法などに一部暗記力、工夫を要する箇所があるものの、タカがしれているでしょう。そのしれていることを忘れるんだから、もう何度も反復してくれとしか言いようがありませんが。
さて、社会と理科。もうこの2教科は相当の数、覚えねばならないことがあるのはご存知のとおり。それも積み重ねではなく、横に並列的に並んでるのであり、簡単にいってしまえば、一度習ったら、それで終わりの知識の集積です。
ほんとうはそうじゃないのだけど、生徒を視ていると、つくづくそう思わざるを得ない。学校のゆとり教育のなかで、時間をかけゆっくりと物事を観察し、考え、理解し、そして覚えていく、積み重ねていくということが、現実のなかでは、いったいどこでどうひっくり返ってしまうのか、この2科目に対する生徒の知識と理解、そして実力は、想像を絶するほど低い。
しかし、ここでは、一つ一つ基礎的なことを覚えてるかどうかに焦点をあてて論じてるわけではなく、その上の段階、「覚えてることは覚えてるんだけど、はて、正解はどっちだったのだろうか?」など、その知識の不安定さについて、暗記の技、ヒントなるものを書いていますので、その方向でのみ、もう少しお話を続けます。
ふつう中2で歴史を習う。例えば、詳しい背景は飛ばしますが、1156年に保元の乱、1159年に平治の乱が起こる。平治の乱で頼朝の父の源義朝を破った平清盛は、1167年には太政大臣になり平家全盛時代を築くのだけど、やがて病死し、1185年には壇ノ浦の戦いで平家は滅亡する。
では、中3になったとして問題。1159年に起こった乱で、平清盛が勝利し、その後、兵庫の泊まりを築いて日宋貿易をするなど、平家全盛時代が20年余り続いた。その乱の名称とは何ですか。 <答え> 平治の乱
これがですね現実、8割以上の生徒ができないのです。その理由は? 理由もクソもない。きれいさっぱり忘れてしまうからです。そして書いた生徒のなかには、保元の乱、と答える者もいます。(正答率10%以下)
以前、社会の「歴史」でも書いたように、やはり記憶をよりしっかりする為に歴史年代を一緒に覚えねばね。いいころ(1156)、いいごく(1159)、です。そして混同しないために、「ほう・へい」という、別に理由のない言葉で覚える。つまり、保(ほう)元の乱、平(へい)治の乱の順。
知識に「楔(くさび)」を打つ! それで、記憶はより強固になる。楔は平凡であればあるほどいい。「いいころ、いいごく、ほうへい」です。この言葉に何の意味があるのか?――
なーんもない。しかし、へたな理屈、解釈、理解よりは、遥かに効果的(?)だし、またなぜか不思議に覚えてるもんです。1156年て年代で、すぐ<いいころ>という文句が頭に浮かび、平治の乱、が設
問の答えではないか?と、思考ルートを短く、しかし用心して考えねば。こんなのいくらでもあるんですが、もうひとつ出してみます。
(問い)1931年、満州事変が起こり、翌1932年、海軍青年将校たちが犬養毅首相を暗殺した。この事件をなんというか?
<答え> 5・15事件
そのときは覚えてるかもしれない。しかし、5・15事件と2・26事件の区別が、果たしてどのくらいの生徒にわかっているだろうか。その社会的背景、動機、そして関連性など、どの程度理解しているのだろうか? その数、2%にも満たないだろう。
考えてみてください。歴史勉強は、人類発生から始まって、4大文明、ギリシャ、ローマを少し齧って、日本では先土器時代、縄文、弥生、大和、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、安土・桃山、江戸、明治、大正、昭和、現代と習ってくるわけでしょう。そのあいだ、ヨーロッパ、世界の動きもほんのすこし習います。政治、経済、文化、歴史的出来事など、さまざまな内容を、中学ですからまだ薄っぺらく学習します。
上の問題はとても重要なのですが、昭和という時代の、それも1930年代のことであり、全学習のなかではごくごく一部の知識にすぎません。それだけに、取り合えずでも表面的に(もう少し深い理解は高校になって、日本史、世界史で)覚えきる、覚えこむということは、いまの生徒の暗記力の弱さはさておいて、混乱と誤解を避けるなんらかの工夫が要るということは明瞭なことです。
しかし、そのことを学校の教師はまあ言わないし、生徒も意識してないのが大半でしょう。学習がすでにすんだ生徒は、こうしたことに早く気づくべし。すんでいない生徒は、工夫をしながら地理、歴史の勉強を推し進めるべし、です。
ちなみに上記の問題の、わたしの中学時にした工夫は、次の如くシンプルなもの。
193E年のEに無理に着目して、2・2E事件のEと引っ掛けておく。それだけ。1932年は自ずと5・15事件になる。どっちだっただろうか?と混乱をきたすことは、なんらない。
最後に理科について。わたしは理科についてはプロではまったくありません。できることなら避けて通るのが賢明な気もするのですが、話の流れ上、「暗記の技について」の題名で5科目に関して述べていることもあり、飛ばすわけにもいかず、とぼしい知識のなかで、その工夫、技を述べてみたいと思います。
想い出せばいくらか出てくるのですが、そのなかでも一番大きな工夫を、人からみれば阿呆なと想われるものを書いてみます。(前置きが長いね)
「ハン、セン、カ、リュウ、アン、ゲ」
「セキ、チョウ、ウン、カク、キ、カン」
中3理科の、最後の単元(?)で習う地学。その中の、火成岩の問題です。
図が描けないので文章化しますが、次の問題。
(問い)顕微鏡で見た図が描いてあり、長石、キ石、カンラン石が見え、全体には斑状組織になっていて、黒っぽい色をしてる。この火成岩の名称を下記から選べ。
ア、花崗岩 イ、リュウモン岩 ウ、センリョク岩 エ、ゲンブ岩 オ、ハンレイ岩 カ、アンザン岩
習った当時(うう、数十年前)、花崗岩ならイメージが湧いたが、その他の5つの石の名前とイメージがどうもわからないで困った。しかし、問題を解くに於いて、6つの火成岩の特徴を覚えて、言い当てねばならない。取り合えず6つの岩石名は覚えた。しかし個々の特徴など、束の間ならなんとかなるけど長いあいだ覚えられる筈がない。
そこで、火山岩と深成岩の違いと造岩鉱物に着目して、一気に6つの岩石を判断する方法を、うんうん唸りながら考えた。
火|火山岩(斑状組織) リュウモン岩 アンザン岩 ゲンブ岩
成|
岩|深成岩(等粒状組織) 花崗岩 センリョク岩 ハンレイ岩
わたしはこれを、右下のハンレイ岩から右周りに最後がゲンブ岩にUカーブの形で、頭文字を取りながら覚えることにした。「ハン、セン、カ、リュウ、アン、ゲ」である。反戦歌リュウアンゲ。
次に、造岩鉱物。これを表にすることが出来ないのが残念。左が明るく、右が暗いのだが。とにかく下の順番で斜めに並んでいる。
セキエイ、チョウ石、ウンモ、カクセン石、キ石、カンラン石
これも頭文字を取って、「セキ、チョウ、ウン、カク、キ、カン」と覚えた。
このふたつをもとに上の問いに当て嵌めると、答えは、エ、ゲンブ岩となる。
こういう場合、テキストメールというのはとても不便なものだけど、まあなんとなくわかってください。まさか覚えた当初はこんなに長く記憶できるとは考えもしなかったけれど、「意味がない言葉」でも自分の頭で考え、工夫したものは、そうそう容易く忘れるものではないということをご理解いただければさいわいです。
暗記の技について、ほんの数例を書きました。英語、社会、理科という教科は、ときに理屈抜きの暗記とそれを支える技がとても大事である、とわたしは考えています。これは、「自然に頭に入る」ものでは決してなく、各々自身が、自分の頭と自分の言葉で創り出していくものです。忘れる率を低め、実力を強固にする、そういう角度の勉強もぜひ採り入れてみてほしいと願っている次第です。
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