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§502 暗記力と記憶力の違いについて
<シータ波( θ波 )が発生しているときに>
先日、何度目かの再放送になるんだろうけれど、たまたまNHK・BSのプレミアムアーカイブスで、野田知佑の「風に吹かれてカヌー旅 モンゴル・ロシア1300キロをゆく」という番組を観ました。
モンゴルのフブスグル湖からロシアのバイカル湖まで、約1300キロを1か月以上かけての川旅、写真家の藤門弘氏の二人旅。といっても、撮影に関わるスッフや現地の通訳など、すくなくとも10数人は一緒のはずですが。
野田知佑といえば、有名なカヌーイストでありまたエッセイスト。わたしもその昔、『日本の川を旅する』からはじめ読み始め、たとえば『旅へ』、『ユーコン漂流』、『マッケンジー彷徨』、『カヌー犬・ガク』など、最近の著作は読んではいませんがそれでも10数冊は読んだ憧れの人物であります。
久々にテレビを通してみた野田知佑氏には、まだまだ老いを感じさせない英気としぶさが、その貌にも身体にも滲み出ているようで、変なことにわたしは美しい自然や風景よりも彼の言動ばかり注視していた感がありました。
しかし、その後ネットで調べてみると、この旅は最初、2001年に放送されたものらしく、それなら12年も前のことになり、なーんだ、まだ若く感じるのも(といっても、60代前半ですが)宜(むべ)なるかな、とひとり合点するも、しかしまあとんだ誤解に基づくものでありました。
さて、バイカル湖。湖の水深では世界一、たしか記憶では1600メートルあまりだっかたか。この番組のナレーターが「バイカル湖の面積は約3万平方キロメートルで、琵琶湖の50倍」というのを耳にし、ざっくりした言い方だがなんだか覚えやすい数字だね、と思いました。
ということは、琵琶湖の面積は、3万割る50だから600平方キロメートルになる勘定。600平方キロメートルとはどれくらいの大きさか、イメージがもうひとつピンと来ないので、縦横1辺10キロと60キロの広さの長方形を想像すると、なんとかその広さが、ぼーっと捉まえられました。
火野正平のBSプレミアム番組「こころ旅」で、ちょうど滋賀県を自転車で旅しているときに地図を指して言っていたけれど、琵琶湖は滋賀県のかなりの部分を占めているイメージがあるが、実際は6分の1。よって、600平方キロメートルの6倍の3,600平方キロメートルが滋賀県の面積になる勘定。
1道1都2府43県、総数は47都道府県。単純に滋賀県の3,600平方キロメートルを47倍すると(しかし、これだけは暗算できない・・・)、約17万平方キロメートル。日本の面積はご存知のように約38万平方キロメートルだから、県の面積の大きさでいえば、滋賀県はあまり大きくはないことがわかる。
ちなみに面積が大きい都道府県の順では、北海道が1位なのは誰もが知っているとして、地理が好きな生徒なら2位が岩手県、3位が福島県なのは覚えているだろう。ここでまた調べてみたが、北海道はなんと約8万3500平方キロメートルもあったのには驚いた。滋賀県の面積は実際、順位38番目で、また4000平方キロメートルもあって上記計算との誤差1割にもなるが、まあ許容範囲として、それにしても北海道は滋賀県の約21倍にもなるんだから、軽いショックを受けましたね。
いままでの感覚でいえば、まあ7,8倍のもんだろうと推測したおりましたが、如何にそれがいい加減な認識であるかが、今回よくわかりました。2位の岩手県は約1万5000平方キロメートル、3位の福島県は約1万4000平方キロメートルでありました。
こんな細かい数値はすぐに忘れてしまうでしょうが、しかし、より正しいイメージというか認識を抱いておくためには、単純な順位だけでなくこうした統計的数値をはじめに知っておくことは大事なことかと思います。ただし、こんな知識は、学校の社会なんかの授業で習うはずもなく、あくまで雑学というか自分で好きなところでたまたま目に触れて学ぶものでありましょうが。
さて、NHKアーカイブスの番組では、「バイカル湖の面積は約3万平方キロメ
ートルで、琵琶湖の50倍」と数値を、単純にわかりやすく説明してくれたのですが、わたしのこれまた単純な計算した数値が現実と適っているかどうかすこし気になって、調べてみました。
すると、バイカル湖の面積は、31,494平方キロメートルで、琵琶湖のそれは670平方キロメートルでありました。つまり、琵琶湖の約46倍であったわけです。ただし、琵琶湖と滋賀県の面積で捉えると、計算上の600ではなく670平方キロメートルが実際の琵琶湖の面積ですから、「滋賀県の6分の1」というのは、670平方キロメートルを6倍すれば約4000平方キロメートルになり、すこぶる正しい表現であったことがわかります。
とまあ、ここまでおそらくお読みいただいている方の大半は、なんでこうも面白くない、統計的数値が入った地理的内容をぐだぐだ書いているんだ?!と思われていることでしょう。
これは、勉強のしかたのなかで、暗記力とか記憶力とかよく使う言葉ですが、そしてわたしもこれまでのなかでしばしば使ってますが、暗記と記憶の違いについてすこし、認識を深めておいてもらいたかったからです。
わたしが上でぐだぐだ述べた知識(?)は、暗記に関することですか、それとも記憶に関することですか? どちらだと思われますか。
ひとつのことを、ああでもないこうでもないとごちゃごちゃ、ぐだぐだ書いているのは、暗記ではないですね。暗記なら、もっと単純明快を心がけ、ポイントだけでいい。
勉強には、この暗記力も記憶力もどちらも要ると思います。そして、よく話題にされるのは暗記力です。一般的にいって暗記力は、覚える対象が多く、ある程度のスピード感も要りますが、短期的な記憶に終わることも多いでしょうか。
社会や理科の定期テスト(英語も数学も実際はそうなんですが)では、この暗記力が物を言うのも皆様ご存知のとおりですが、終わればすぐ忘れてしまうことも多いので、たとえ点数がいいからといって、その力がちゃんとあるとは鵜呑みにはできません。
一方、記憶力は、覚える対象は少なく、スピード感とも無縁で、長期的な記憶をします。小さいときに経験した愉しい想いでも、若かりし日の苦い想いでも、記憶にありありと留めています。勉強に関しても、さまざまな無数の記憶があるはずです。
広辞苑(やっぱりこれは要るね)がないので広辞林を引くと、記憶とは、物事を心にとめてわすれないこと、一度知覚したり、経験した事物をあとで思いだす作用のこと、と載っています。
またネット上に、記憶に残すコツは「感情を動かす」ことです、とあるページに書かれていました。感情を動かすたって、いろいろその種類はあるわけで、激怒することもあれば、欣喜雀躍するのもあり、深く落胆するのもそうだろうけれど、まあ勉強の場面で考えると、へーっ、そうなんだ・・・、と新しいことに気づいたり、発見したりして驚くというか、感動することが、これにあたる気がします。
ただつねにこうした感情が生まれるわけではないんだけど、勉強をしていく基本にこのような気持ちと取り組む態度さえあれば、けっこうふだんの学習のなかの小さなことでも感動しないまでも驚くことはあるのではないしょうか。しかし如何せん、長年教えてきた経験上からいって、これを持っている生徒、表に出てくる生徒は、ほんとに少なかったですね。
無感動といえばいい過ぎなれど、たとえばとっても便利で時間も短縮でき、計算ミスも結果防げ、かつ応用の問題のなかでも活用できる数学の公式を教えても、そんなに有難そうにはみえない生徒が多数で、ははーん、これならこの教えた公式は記憶に残らないね、とよく感じたものです。
ところで、聞きかじりながら、記憶と学習に適している脳波の関係というものがあるらしく、それでは、シータ波( θ波 )が発生しているときに脳は記憶しようとし、シータ波が発生しないときは、脳は記憶しないとのこと。
気持ちが集中してないとき、いらいらしているとき、また勉強に乗り気でないときは、脳波がベータ(β)波となっており、シータ波が出るのは、興味を持ってものごとを見つめているとき、とのこと。なるほど・・・、おぼろげながらわかるような気がしますね。
つまり、記憶の良しあしは脳波に影響され、その脳波を決めるのは、本人の気持ちということですか。
どこまでが暗記で、どこまでが記憶なのか、そんな線引きはまったく不要で、実際は混在しているのだと思います。
はじめに、バイカル湖と琵琶湖について書きました。これは、暗記というよりも記憶のしかたについて、その様子をあえて述べたつもりなのですが、ネット上に載っているひとつ、「暗記学習の方法とコツ」では、以下の3点を挙げていました。
・記憶しやすい脳の状態で覚える。
・連想やイメージを利用する。
・反復する。
これについて、ちょうどいい実験になりますね。もしよろしければ次の4問を、制限時間1分でやってみてください。(解答は下に)
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1.バイカル湖の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約 平方キロメートル)
2.都道府県の面積で、3番目に大きい県は何県ですか?
( 県)
3.日本最大の琵琶湖の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約 平方キロメートル)
4.滋賀県の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約 平方キロメートル)
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<解答と寸評>
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1.バイカル湖の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約3万平方キロメートル)
2.都道府県の面積で、3番目に大きい県は何県ですか?
(福島県)
3.日本最大の琵琶湖の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約600平方キロメートル)or 670平方キロメートル
4.滋賀県の面積は、約何平方キロメートルですか?
(約4000平方キロメートル)or 3600平方キロメートル
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おそらく誰も、わたしの地理に関する記述なんかにはシータ波( θ波 )が発生していないとは思いますが、それとは逆に、興味もない、乗り気にもなれない、つまり気持ちがあんまり入っていないまま(?)お読みいただいたかと思いますので、結果のほうはなんら気になさる必要はありませんが、一応寸評など書いておきます。
記憶や暗記には、正確に覚えなければ意味がないものと、アバウト知っておれば事足りるものがあります。この場合、バイカル湖の面積は約3万平方キロメートルで、琵琶湖はその50分の1。そして琵琶湖は滋賀県の6分の1。
つまり、このアバウトな数値を記憶に刻んでおけば、誤差1割くらいとして、あとは計算をすればいいだけの話。これが核です。あとは覚える力に余裕があれば、肉付けしたり、膨らませていけばいい。実際、この知識が社会の入試問題でどう役立つのかはまた別の機会があれば説明したいと思いますが(ただし、この知識はほとんど利用されることはないのですが)、ここでは省きます。
さて寸評。1と3と4の3問ができれば、大正解であります。正確な数値でも、計算から求めたアバウトな数値でもどちらでもいいです。いけないのは、ちんぷんかん数字です。2は、プラスアルファの知識です。4問ともできた場合、もともと地理が相当得意で、好きな方だと思います。
残念ながら2問以下の方は、「連想やイメージを利用する」と「反復する」が、今後必要なのでしょう。
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