629 英語の発音とスペリングについて
<経糸に横糸一本を通すが如く>
著者・副島隆彦の「続・英文法の謎を解く」という本を読んだ。納得する部
分も大いにあったのだが、どうも違うなとか、不愉快に感じるところも少なか
らずあった。
不愉快に感じるところをここで論っても、それは不愉快な想いを人に拡散す
るだけのものでなんら益するところもなく、大いに納得するところだけを、そ
して現中学生にも役立つところの一部分を、わたしの経験と知識も加えつつ述
べてみたい。
それは、英語の音声についてである。
まず前提として現在、音響音声学という学問的視点では、人間の音声はすべ
て、厳密には音声記号(発音記号)で表せるものではない、ましてやカタカナ
表記するなど問題外ということになる、と説明された上で、しかしそれでも、
自分たちの足元の現実を見つめれば、こんなことはいっておれない、こんな些
細な、どうでもいいと思われる点にこそ、日本人にとっての英語学習の苦しみ
と躓きの石があるのだと指摘、素朴な音声記号とカタカナ表記の問題として、
その意見を述べておられる。
氏は「オー」と「オウ」という長母音のカタカナ表記に、日本人英語発音の
致命的欠陥が生じた、という。より正確に書けば、どうして日本人は、「オウ
[ou] 」の音まで「オー[?:] 」という長母音のカタカナ表記をし続けたのか?
!ということである。
このことに拠って数百語の基本的な日本語化した英単語を区別して聞き取れ
ない、そしてスペリングできないという悲劇が起こった、と。
たとえば。coat(上着)は「コウト[kout]」であって、「コート[k?:t]」で
はない。「コート[k?:t]」は、court(裁判所・法廷)である。
boat(ボート・船舶)は「ボウト[bout]」であって、「ボート[b?:t]」では
ない。「ボート[b?:t]」は、bought(buyの過去形)である。
road(道路)は「ロウド[roud]」であって、「ロード[r?:d]」ではない。r
とlの発音上の区別があるが、「ロード[l?:d]」ならlord(主人・支配者)に
なる。
こうした区別ができない単語のほかに、カタカナ語として日本語化したコト
バに「オウ[ou] 」の音を「オー[?:] 」にしてしまう表記もやたらと多い。
ゴール(goal→[goul]ゴウル)、ソープ(soap→[soul]ソウル)、ホープ
(hope→[houp]ホウプ)。この例ではないが野球で使うグローブなんて、glove
「グラブ[gl?b]」であろう。「グロウブ」ならglobe(地球)という単語がある。
かなり古臭い知識になるが昔は大学入試でよく出たオーブン(oven)という単
語。これはアヴン「[?v?n]」である。
次に、「二重母音」の音声とスペリングの関係。
「[ai] 」と「[ei]」の発音記号は、日本語のカタカナの「アイ」と「エイ」
にほぼ対応して発音も同じと考えてよく、また「[au] 」と「[ou]」の発音記
号もそのまま「アウ」「オウ」と読んで、発音も同じでいい。
では、スペリングとの関係はどうか?
なんでも例外というものがある。語学なんだから、なおさら例外はつきもの
である。問題はしかし、その例外を除いた基本のルールあるいは法則みたいな
ものを、スペリングのなかにもし見つけることができれば、これはありがたいものだ。
英単語のつづりのなかに「-ou-」があると、それは「アウ[au]」と読むので
す。たとえば、houseはホウスではなくハウスでしょう。aboutはアバウト、
mouse(ねずみ)はマウス、found(findの過去形)はファウンド、cloud(雲)
クラウドですね。cousin(いとこ)はカズンで、例外。
しかし「-ough-」(-augh-も)となると、「オー[?:] 」ですね。thought
(thinkの過去形)はソート、caught(catchの過去形)はコート。 through
(〜を通り抜けて)はスルーで例外。例外は5%から10%ある。
では「-au-」であるとどうなるかというと、それは「オー[?:]」と読む。
August(8月)はオーガスト、Australia(オーストラリア)はオーストレイ
リア、autumn(秋)はオータム。aunt(おば)はアーント[?:nt](またはア
ント)で例外。
ちなみに「-oa-」は、すでに上で書いたboatやcoatのように「オウ[ou]」で
すね。
さて、母音である。ふつうこうしたことを書く場合、まず母音から始めるの
が一般的であるが、この母音には「オー」と「オウ」の欠陥よりずっと大きな
問題を抱えているので、後回しにした。
この母音なかの発音で、「ア」にあたるのが[a]、[a]、[?]、[?]、[?]の5つ
ありますね。 日本語で「ア」はひとつしかない。もう一度書きますが日本語
ではひとつしかないのに、英語音では5つもある! うーん、なんてことだ?!
母国語が英語である人々の脳では、この「ア」をすべて違う音として聞き分
けられるのに対して、日本人は幼児のときに、この5つの音声域にある「ア」
をすべてひとつのものとして刷り込まれる環境にあるのだから、大きくなれば
区別して聞き分けることができないのも至極当然な話なのである。
まあしかし、それは英会話の問題として、ここでは発音とスペリングの関係
に留めて、あとすこし続けるとします。
1.[?] この�イ魑佞気泙砲靴�[?]が、日本語の「ア」の発音に最も近い。
one(ワン[w?n]),front(フラント[fr?nt]),from(フラム[fr?m]),
summer(サマ(ー)[s?m?]),bus(バス[b?s]),supper(サパー[s?p?]),
sun(サン[s?n]),son(サン[s?n])など。
見てわかる通り「-u-」のスペルの90%前後は、「ウ」ではなく「ア[?]」
と読むね。
2.[a] 「ア[a]」 と「エ [e]」が混じったような音質。
apple,bag,family,glad,animalなどなど、これはその都度暗記するしかない。
3.[?] 曖昧でぼんやりした「ア」。曖昧母音といわれ、アクセントが来な
い。口の緊張はなく、ほとんど口を開かないで発せられる音質です。日本
人にとって、ネイティブスピーカーの英語聞き鶏肉と感じるのは、このは
っきりしない曖昧な「ア」のせいだといえる。
4.[?] 「オ」の口で「ア」を発音。[a] とは別の音。イギリス英語では[?]
になることが多い。アメリカ英語では[?]、イギリス英語では[?]、また
下で書く[a] とは別の音とは、どういうことだ? ややこしい・・・。
3と4の長母音である[?:]と[?:]の区別をスペリングの関係で覚えておき
たい。低くてははっきりしない「アー[?:]」と、口を大きく開けて発音
する「アー[?:]」。これはほんとリスニングがないテスト形式ではよく
出た。(ただし、いまも私立入試の一部では出るから、知っておいたほう
がいい。)
「-ar-」なら、口を大きく「アー[?:]」
large,park.farm,garden,startなどなど。
「-ear-」「-ir-」「-or-」「-ur-」なら、90%以上あいまいな「アー[?:]」
heard(hearの過去形),early,bird,girl,work,word,turn,hurt(傷つけ
る)などなど。ただし、 heart(心)は例外で「ハート[h?:t]」である。
5.[a] 「アウ [au]」や「アイ[ai]」のように二重母音に現れる音。
aboutのou [au] の [a]の音、またlikeのi[ai]の[a]の音。
母音でもまだもうすこし言及しておきたい点はあるけれど、そしてまた子音
に広げるとさらに説明が多くなるので、このへんにしておきます。
こういう発音とスペリングに関する指摘は、英単語を覚えていく上で役に立
つかというと、副次的なものにすぎないといえる。圧倒的に、英単語は書いて
書いて、手と口で覚えるべきものだ。
メアリー(Mary)って女の子の名を、Mearyと書く生徒がいるんですね。こ
れは中1生に多いけれど、英語のデキがよくない生徒は中2・中3生でもいます
よ。ほんと基本の、英単語というものは、手で何回も何十回も書いて覚えるい
うことを知らない、あるいはできていないんですね。スペリングのミスという
ものは、複雑な式の計算ミスよりもっと低次元の九九の計算ミスと同じ程度だ
と自覚して、絶対にしないように日頃からよくよく訓練を積んで暗記しておき
たいものです。
いまの中学の英語教科書で出てくる英単語は大幅に増えて、3年間でおよそ
1600〜1800語くらいになるけれど、それを100個、200個、300個と正確に覚え
て、そして500個から半分くらい暗記してきたなかで、うん?・・・、なにか
発音とスペリングの間にルールがすこしあるんじゃないか?と気づくように
なれば、その時は上で書いたことが、経糸に横糸を通すが如く、ちょっとだけ
役に立つかもしれません。
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