高校入試でターイセツなこと、って何だ?!
§86 数学の図形分野について
<入試数学の問題の半分は、図形でしょう?!・・・> 

 いま、中2生対象に、「中2数学の実力をつける問題集」を作成しています。これをやれば、今の自分の力が正確にわかり(大抵はこんな筈はない、もっとましだと思うでしょうけど)、そこから正しく学習すると、まず間違いなく実力はつき、ワンランクアップの強固な基礎学力がつく、という自信作。それはそれは活きた学習が一直線に出来る、筆者渾身の力作(?!・・)です。次回、その詳しい問題内容、作成目的、学習のしかたなどについて触れたい、と考えております。

 さて、今回、作っていて感じたことがあるのですが、それについて以下少し述べてゆきます。

「数学って、なんだ?!」と、その質問の意味が、いまいちよくわからない問いに応じるとすれば、「それは、まあ、図形だなあ」と、これまた問いの意味をよく斟酌することもなく応えますね。

 昔はもう少し、中学数学にも、びしっとした言い方がありました。「代数」と「幾何」です。代数は、ふん、それがどうした、という気がありましたが、幾何には、気を抜くことができない、また用心を怠るとひどいしっぺ返しがくる惧れと緊張感があり、またそれだけに未知の魅力もありました。

 それに較べ、いまの中学数学の図形のあり方は、生温い。教科書、然り、生徒の図形能力、然り、学校の教え方、然りです。されどそれでも、今までの入試数学の図形そのものは、決して生温くはなかった。ところが今度の新指導要領では、図形の発展部分、応用部分、直観力とダイナミックな思考の要する部分がすべて、ほんとに見事にすべて、無残に摘み取られ、ぷつんと切断され、また排除されてしまった。図形の応用で面白い部分は、まったく行き場を失って消失した感がする。

 さて、来年以降の入試内容はどうなるか。今回それにはあまり言及する気はありませんが、簡単に触れておくと、この生温い、骨抜きの指導範囲内で推移するなら、まともな入試問題(特に図形関係)は作れないだろう、また、うーん、これはいい、と唸らせる図形問題の作成は困難だろうということです。しかし私立では、その方針はさまざまも、従来の指導内容を堅持する学校も多々あり、自ずとその問題レベルは高度なまま、ますます格差が、入試問題一つ取っても拡がることは間違いない、といえるでしょう。

 まあそれはかなり深刻な問題なのですが、今回の主旨ではないので話を戻すとして、公立中学の数学全般の内容、そこに占める図形について、ちょっと考えてみます。

 下に「図形」を習う期間を書いてみました。【 】で括ってある部分です。
 中1、2年は12ヶ月、中3は10ヶ月として、誤差はあるでしょうが、また休みもあるのも考慮しなければなりませんが、大体の習う時期のイメージとその割合がわかるかと思います。

 <中1>→ 1 2 3 4 5 6 7 8 9【10】【11】12
 <中2>→ 1 2 3 4 5 6 7【8】【9】【10】11 12
 <中3>→ 1 2 3 4 5 6 7【8】【9】【10】

 どうでしょうか?――― 
 少ない、ですね。あまりにも、習う期間が少ないのです。ご存知でしょうか、入試問題からみますと、その構成が大問4問としますと、図形は2問(平面図形と空間図形)占めることが多いのです。大問5問構成なら、確実に2問が図形です。つまり、図形問題ができなければ、入試数学で高得点は取れないということ。高得点でなくとも、まあそれなりに、という点数ですら、実際、かなり難しいことになる。図形が強くなければ、図形問題に強くならなければ、入試数学は攻略できないということです。

 数学の実力の「半分」は図形に在り、といっても過言ではない。ついでにいいますと、残りは関数がポイント。あとに来るのは新学力観とやらで、規則性を見つける問題、日常の中の問題から数学思考を見る問題などです。おいおい、計算はどうした? 文章題はどうなった? 

 小学校では文章題が苦手、中学では関数がいまひとつわからない、図形が弱い、という声をよく聞くけど、じゃあ、数学の、何が出来るの?! 特に入試から観た場合、「図形」と「関数」で総点数の3分の2を占めますよ。この現実をよく識っておいて、勉強に臨まれることを!

 もう少し詳しく観てみます。各学年、最後に図形を習うわけです。中1では正負の数に始まり、文字式、方程式、正比例、反比例、そして、平面・空間図形となります。学校の授業進度で考えますと、小学校から含め、図形はなんと呆れることに、ほぼ1年ぶりに勉強することになります。

 即ち、平均的な生徒なら、1年間、頭の中には図形なるものが、図形をみる目と感覚、そして思考が存在していない、まったく働いていないということです。ちょっと乱暴な表現ですが、それは手を加えないほったらかしの休耕田と同じです。その土壌は、かちかちに固まってやせ細り、養分なんてほとんどないのに均しい。

 その図形センスは、そうですね、中1生なら、立方体(の見取り図)を描かせてみて下さい、1分もかかりませんから。ものさしを使わずに手書きで、また何も言わないと小さなものしか描きませんから(それでは判別できない)、1辺3センチくらいの(それ以上大きくてもかまいません)立方体がいいです。

 結果を、5タイプに別けましょうか。
1.「立方体」が何かわからず描けない生徒。
2.線が平行に描けておらず、立方体の体をなしていない。
3.実線に対し、見えない部分が点線で描けていない。
4.立方体というより、どう見ても直方体にしか見えない。
5.ちゃんと立方体に見える。

 小学校で如何に適当で杜撰な図形勉強をやって来たかが、またそんなことと関係なく、本人の図形感覚の、あまりにも幼稚で未発達なのがわかる筈です。4ならいいほうで、半数以上の生徒が2だと推測しますが。さて、どうでしょうか。

 それに比例する(?)かのように、1年ぶりで習う中1の図形の内容はというと、これは正直な感想を言わせてもらえば、ほんとお粗末でたいしたことはなく、平凡で発展性が殆どなく(通常の学校の授業内容ではのこと)、こんなのによくもまあかなりの時間を費やすなあ、と思う内容です。たいしたことがないのに、勿体ぶって時間をかけ過ぎのような気がします。

 中2の図形からが、やっと数学らしい内容になるかな? しかし、またしてもその間隔は、8ヶ月ほど開くのですね。これはおかしいですよ。ほんのちょっと図形の基礎、底辺を中1で齧った程度に過ぎませんが、生徒の頭はまたしても図形から遠のき、中断されてしまうことになる。つまり、この不連続性のため、かなりの数の生徒が中2の2学期の時点で満足な図形思考が出来ず、苦手な結果になる。

 当前ですよね、これだけ間隔があき、上っ面の図形しか演習していないのだから。その中2の内容ですが、図形で「相似」がなんと中3に移行しました。これはどういうことかというと、相撲で譬えると、横綱が消えてなくなったに均しい。「合同」とその証明なんか、3ランク下の問題で小結以下でしょう。そしてまた習う内容は浅く(それでも証明には、生徒は大の苦手としますが)、応用、発展した問題は、入試の観点でいうと、あまりに少なく奥行きが狭い。これは、新たに問題作りをしていて痛感します。

 図形の頭はあまり休めないほうがいいのです。が、また、中3になるとその間は開き、学校ののんびりしたペースでみると、9ヶ月ほど習わないんですね。ひどいも何も、生徒は証明はおろか平行四辺形の定理ですら忘れていますよ。このような状態で、図形が出来る筈がない。基礎は何とか必死に教えてわかっても、応用になると、つまり入試問題でみると、からきしだめになる生徒のあまりにも多いことか・・・。

 それは学校のテストでは、明らかに判断できませんから。厳しい言い方ですが、図形に関する限り、定期テストの点がたとえ85点でも94点でも、それがどうした、一体何?と思っていますから。入試問題の図形は、そんな基礎のテストの点数では決して計れないことを、20数年の経験で嫌というほど味わってきましたので。また逆に、図形にけっこう強い、本当に図形能力があるなあという生徒も、最終の篩にかけると極めて少ないのも冷然とした事実ですが。

 さて、それはさし措いて、2学期後半から「相似」「3平方の定理」の勉強です。以前「相似」は2年でしたが、これに「円」があり、「図形と計量」の単元がありました。まさに入試問題の宝庫です。

 これを3ヶ月ぐらいでするわけですから(因みに私はといえば、塾のほうでは5ヶ月から6ヶ月の期間、図形に費やしています。それでも出来ない生徒は出来ない。全体に、まあかなりましになりますが)、それも応用や難しい入試に出る問題は出来る限り避けて、基本だけを学校ではするわけですから、入試図形の対応も何もまるっきりない、と考えておいたほうがいい。

 時間をあまりかけないでもいいのに、基礎だからといって時間をかける。時間をかけてやらねばならないときに、何ら応用やその解説をすることもなく時間もない。それが今の学校での図形勉強の姿です。矛盾しています。おわかりになると思いますが、それではちっとも図形能力は育たない。

 図形の頭はあまり休めないほうがいいのです。といいますか、もっと図形に接する時間を増やし、絶えず訓練し、応用問題にチャレンジして思考すること、その中でポイントと解法を会得することが、入試を制する一つの重要な鍵になることは間違いありませんね。